ロスチャイルド男爵(英語: Baron Rothschild)は、イギリスの男爵位。連合王国貴族。第2代準男爵サー・ナサニエル・ロスチャイルドが1885年に叙爵されたことに始まる。

2024年現在の当主は第5代ロスチャイルド男爵ナサニエル・フィリップ・ヴィクター・ジェイムズ・ロスチャイルドである。

歴史

英国ロスチャイルド家初代当主であるネイサン・メイアーは1822年にオーストリア皇帝フランツ2世より男爵位を与えられ、オーストリア貴族に列していた。

イギリス国内における称号では、1847年1月12日にネイサンの次男であるアンソニーがイギリス女王ヴィクトリアにより、(グローヴナー・プレイスの)準男爵(Baronet, of Grosvenor Place)を与えられている。この準男爵位は長兄ライオネルの息子たちへの特別継承規定を認めていた。そのため、男子の無いアンソニーが1876年に死去すると、ライオネルの長男ナサニエルが准男爵位を継承した。

さらにナサニエルは1885年6月29日にヴィクトリア女王よりハートフォード州トリングのロスチャイルド男爵(Baron Rothschild, of Tring in the County of Hertford)に叙され、連合王国貴族に列した。爵位名は、ナサニエル自身がヴィクトリア女王に頼んでロスチャイルド家の家名と同じにしてもらったという。ナサニエルはユダヤ教徒ユダヤ人で最初の貴族院議員であり、貴族院での宣誓の際にはユダヤ教の三角帽をかぶり、ユダヤ教式の宣誓を行っている。

ナサニエルは1915年に死去し、その長男ウォルターが爵位を継承した。ウォルターは動物学者として著名である。またイギリス政府がバルフォア宣言を出すのに貢献した人物としても知られる。ウォルターには子がなかったため、1937年にウォルターが死去するとウォルターの弟チャールズの長男であるヴィクターが第三代男爵位を継承した。1990年にヴィクターが死去すると、その長男ジェイコブが第4代男爵となっている。

初代男爵ナサニエルは銀行家であったが、第2代男爵ウォルターは銀行業にほとんど関心をもたず、その弟チャールズも病弱だったので彼らの代からN・M・ロスチャイルド&サンズの経営権は分家(ナサニエルの弟レオポルドの家系)に移っている。第4代男爵ジェイコブもRIT・キャピタル・パートナーズという独自の金融業を行っている。

2024年2月26日に第4代男爵ジェイコブが死去。長男ナサニエル・フィリップ・ヴィクター・ジェイムズ・ロスチャイルドが第5代ロスチャイルド男爵位を継承した。

5代男爵ナサニエルには現時点で子供がなく、従兄弟(第3代男爵の三男アムシェル・ロスチャイルドの子)にあたるジェイムズ・アムシェル・ヴィクター・ロスチャイルドがロスチャイルド男爵位の推定相続人である。ジェイムズはヒルトンホテルの創業者一族でファッションモデルのニッキー・ヒルトンと結婚しており、夫妻は2022年は男子を設けた。ニッキーは息子の名前を明らかにしていなかったが、2024年に「チャセン(Chasen)」という変わった名前であることを明らかにした。ジェイムズとチャセンのみがロスチャイルド男爵位の継承が可能な人物である。准男爵位の方は初代男爵ナサニエルの弟たちの家系も継承が可能である。

紋章に刻まれるモットーは「協調、誠実、勤勉(Concordia Integritas Industria)」。

現当主の保有爵位・準男爵位

現当主ナサニエル・フィリップ・ロスチャイルドは以下の爵位・準男爵位を保有している。

  • ハートフォード州トリングの第5代ロスチャイルド男爵(5th Baron Rothschild, of Tring in the County of Hertford)
    (1885年6月29日の勅許状による連合王国貴族爵位)
  • (グローヴナー・プレイスのロスチャイルド)第6代準男爵(6th Baronet, of Grosvenor Place)
    (1847年1月12日の勅許状による連合王国準男爵位)

海外爵位

  • 第7代ロートシルト男爵(Freiherr von Rothschild)
    (1822年9月20日創設のオーストリア貴族爵位)

歴代当主一覧

(グローヴナー・プレイスのロスチャイルド)准男爵(1847年)

ロスチャイルド男爵(1885年)

爵位継承順位

  1. ジェイムズ・アムシェル・ヴィクター・ロスチャイルド(James Amschel Victor Rothschild) (1985年-) 現当主の従兄弟。推定相続人。
  2. チャセン・ロスチャイルド(Chasen Rothschild)(2022年-) 上記の長男

家系図

出典

参考文献

  • ヨアヒム・クルツ 著、瀬野文教 訳『ロスチャイルド家と最高のワイン 名門金融一族の権力、富、歴史』日本経済新聞出版社、2007年。ISBN 978-4532352875。 
  • 池内紀『富の王国 ロスチャイルド』東洋経済新報社、2008年。ISBN 978-4492061510。 
  • フレデリック・モートン 著、高原富保 訳『ロスチャイルド王国』新潮社〈新潮選書〉、1975年。ISBN 978-4106001758。 
  • 横山三四郎『ロスチャイルド家 ユダヤ国際財閥の興亡』講談社現代新書、1995年。ISBN 978-4061492523。 

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