第32回世界遺産委員会(だい32かいせかいいさんいいんかい)は、2008年7月2日から10日まで、カナダ・ケベック・シティーのコンベンション・センターで開催された。ケベック・シティーは旧市街の歴史地区が、1985年に世界遺産リストに登録されている都市で、カナダでの委員会開催は第14回世界遺産委員会(バンフ)以来、2度目である。この世界遺産委員会において文化遺産19件、自然遺産8件の計27件が登録された結果、世界遺産リスト登録物件の総数は878件となった。

委員国

委員国は以下の通りである。地域区分はUNESCOに従っている。

審議対象の推薦物件一覧

物件名に * 印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録などを示す。太字は正式登録(既存物件の拡大などについては申請用件が承認)された物件。英語名とフランス語名は諮問機関の勧告文書に基づいており、登録時に名称が変更された場合にはその名称を説明文中で太字で示してある。

第32回世界遺産委員会の審議で新規に世界遺産保有国となったのは、サウジアラビア、サンマリノ、バヌアツ、パプアニューギニアの4か国である。なお、今回の審議では、7月6日から7日に審議が行われた物件での逆転登録が相次ぎ、諮問機関の勧告を尊重することや管理計画などを適切に評価すべきことが再認識されたため、8日の審議では逆転登録される例が抑制されたという。

自然遺産

文化遺産

危機遺産

危機にさらされている世界遺産(危機遺産)リストについては、そこから除去される物件も、そこに新規記載される物件もなかった。そのため、危機遺産の総数は前年と同じ30件のままである。

危機遺産リスト記載物件の中では、前年に引き続いてドレスデン・エルベ渓谷の扱いに、多くの時間が割かれた。最終的な結論は翌年に持ち越されたが、建設がすでに始まっていることもあり、このまま工事が中止されなければ、翌年に世界遺産リストから抹消されることが決められた(実際に、翌年の第33回世界遺産委員会で抹消されることになる)。

強化モニタリング

危機遺産の増加はなかったが、前年から導入された強化モニタリング対象として、以下の4件が新規に追加された。いずれの理由も都市開発など、範囲内や近隣の開発への懸念が示されたものだが、特に問題となったのは月の港ボルドーである。前年の登録時点で高く評価されていた要素の一つであった旋回橋が取り壊されたことと、代替となる橋の建設計画が持ち上がっていることが問題となり、翌年以降の世界遺産リストからの抹消の可能性もはっきり示された。

登録基準の変更

以下2件の適用される世界遺産登録基準について、差し替えや追加が行われた。

軽微な変更

以下の通り、軽微な変更が行われた。

名称変更

以下の3件について、当該国の要請に基づく名称変更が承認された。

なお、「メキシコシティ歴史地区とソチミルコ」( メキシコ)は「メキシコシティ歴史地区とチナンペロ・デ・ソチミルコ、トラウアク、ミルパ・アルタの文化的景観」(Historical Centre of Mexico City and the cultural landscape of Chinanpero de Xochimilco, Tlahuac and Milpa Alta / Centre historique de Mexico et paysage culturel de Chinapero de Xochimilco, Tlahuac et Milpa Alta) と名称変更することを申請していたが、ICOMOSからは範囲の面でも「文化的景観」という分類の面でも当初の登録理由を逸脱しているという勧告が示されており、変更は見送られた。

その他の議題

緩衝地域の位置づけ

従来、明確に定義されていなかった「緩衝地域」(バッファー・ゾーン)について、それが世界遺産登録範囲ではないことや、緩衝地域は世界遺産登録範囲を守るためのものであって、それ自体が顕著な普遍的価値を有するものではないことなどが、初めて定義付けられた。この定義を踏まえ、従来の「核心地域」(コア・ゾーン)という呼称が廃止され、「資産」(プロパティ)という呼称が代置された。

脚注

脚注

出典

参考文献

  • ICOMOS (2008a), ICOMOS Evaluations of nominations of cultural and mixed properties to the World Heritage List (WHC-08/32.COM/INF.8B1), https://whc.unesco.org/archive/2008/whc08-32com-inf8B1e.pdf 
  • ICOMOS (2008b), Addendum: ICOMOS Evaluations of nominations of cultural and mixed properties to the World Heritage List (WHC-08/32.COM/INF.8B1.Add), https://whc.unesco.org/archive/2008/whc08-32com-inf8B1ADDe.pdf 
  • ICOMOS (2008c), Addendum 2: ICOMOS Evaluations of nominations of cultural and mixed properties to the World Heritage List (WHC-08/32.COM/INF.8B1.Add2), https://whc.unesco.org/archive/2008/whc08-32com-inf8B1ADD2e.pdf 
  • IUCN (2008), IUCN Evaluations of nominations of natural and mixed properties to the World Heritage List (WHC-08/32.COM/INF.8B2), https://whc.unesco.org/archive/2008/whc08-32com-inf8B2e.pdf 
  • World Heritage Centre (2008a), Nominations to the World Heritage List (WHC-08/32.COM/8B), https://whc.unesco.org/archive/2008/whc08-32com-8Be.pdf (English / Français)
  • World Heritage Centre (2008b), Decisions Adopted at the 32nd Session of the World Heritage Committee (Quebec City, 2008)(WHC-08/32.COM/24rev), https://whc.unesco.org/archive/2008/whc08-32com-24reve.pdf 
  • 稲葉信子 著「第32回世界遺産委員会ニュース」、日本ユネスコ協会連盟 編『世界遺産年報2009』日経ナショナルジオグラフィック社、2009年、38-40頁。 
  • 鈴木地平「新規記載(文化遺産)にかかる審議とその傾向」『月刊文化財』第541号、16-21頁、2008年。 
  • 世界遺産アカデミー; 世界遺産検定事務局『世界遺産検定公式基礎ガイド2009年版』毎日コミュニケーションズ、2009年。ISBN 978-4-8399-3181-0。 
  • 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典〈上〉』マイナビ、2012年3月30日。ISBN 978-4-8399-4163-5。 (世界遺産アカデミー監修) (2012a)
  • 世界遺産検定事務局『すべてがわかる世界遺産大事典〈下〉』マイナビ、2012年3月30日。ISBN 978-4-8399-4164-2。 (世界遺産アカデミー監修) (2012b)
  • 西和彦「第32回世界遺産委員会の概要」『月刊文化財』第541号、10-15頁、2008年。 
  • 日本ユネスコ協会連盟『世界遺産年報2009』日経ナショナルジオグラフィック社、2009年。ISBN 978-4-86313-062-3。 
  • 古田陽久; 古田真美『世界遺産事典 - 2014改訂版』シンクタンクせとうち総合研究機構、2013年。ISBN 978-4-86200-179-5。 

外部リンク

  • 32nd session of the Committee(世界遺産センター)

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