『男の編み物、橋本治の手トリ足トリ』(おとこのニット、はしもとおさむのてトリあしトリ)は、作家の橋本治がセーターの編み方を解説した本。1983年に河出書房新社より出版された。
出版の経緯
1980年代に男性編み物ブームがあり、男性が挑戦する編み物コンテストのテレビ番組も放送された。
作家の橋本治は、大学生だった1970年前後からセーターを編み始め、元祖編み物男子とも評されている。
橋本が「桃尻娘」シリーズの一編を発表した「小説現代」1978年12月号に「私のコレクション オリジナルセーター」というグラビアが掲載され、橋本のニットコレクションが初めて披露された。その後「編み物作家」の肩書きがつき、毎年秋から冬に雑誌の取材依頼が数件入るようになった。「週刊宝石」1982年12月17日号では「毛糸と針の錬金術師 橋本治のニット展覧会」と題して8ページの特集が組まれた。この記事を河出書房新社の編集者、小池信雄に見せたところ、『男の編み物』の刊行につながった。
概要
担当編集者は小池信雄。装丁は早川タケジ。早川はカラーページのディレクションを全て手がけた。
編み初めの目を作るところから、写真ではわかりにくいところが絵で説明されている。イラストを頼むための絵コンテづくりが面倒になり、橋本自身が図を描いた。
デヴィッド・ボウイ、沢田研二、山口百恵、マリリン・モンロー、歌舞伎の世界などの絵柄が編み込まれたセーターが掲載された。
橋本の本の中でも3万部という反響を得て、 1989年には新装版が出版された。
書籍情報
- 橋本治『男の編み物、橋本治の手トリ足トリ』河出書房新社、1983年11月。全国書誌番号:21888972。
- 橋本治『男の編み物、橋本治の手トリ足トリ』(新装版)河出書房新社、1989年12月。ISBN 4-309-26123-X。 - ハードカバー
評価
編集者の河野通和は、『男の編み物』が編み物に関心のない男たちに向けて編み物の面白さを教え、男たちが編み物を「発見」するきっかけになったこと、編み物を知った気になっている女たちに向けて「本当にそうなのか」という問いを投げかけ、新たな提案をしていることを指摘し、橋本の「作家としての戦略性や、立ち位置のとり方、腹のくくり方がはっきりと見えた」と述べている。
ニット作家の編み物☆堀ノ内は『男の編み物』に大きな影響を受けたと述べている 。
脚注
注釈
出典
関連文献
- 『チャレンジニット男が編む!!』日本ヴォーグ社、1982年10月。全国書誌番号:21886855。 - 巻頭に橋本治のエッセイがある
- 『チャレンジニット男が編む!! 2冊め』日本ヴォーグ社、1983年10月。全国書誌番号:21888952。 - 巻頭に橋本治のエッセイがある
- 『チャレンジニット 編む男のセーターブック 3冊め』日本ヴォーグ社、1984年9月。全国書誌番号:21893340。
- 『チャレンジニット 4冊め』日本ヴォーグ社、1985年。ISBN 4-529-01016-3。
参考文献
- 橋本治「セーター騒動顛末記」『広告批評』第59号、1984年4月、28-43頁、大宅壮一文庫所蔵:200194699、NDLJP:1853024/16。
- 公益財団法人神奈川文学振興会 編『帰ってきた橋本治 展』県立神奈川近代文学館・公益財団法人神奈川文学振興会、2024年3月30日。国立国会図書館書誌ID:033406356。