三陸沿岸道路(さんりくえんがんどうろ、英語: SANRIKU COAST EXPWY)は、宮城県仙台市宮城野区から青森県八戸市に至る日本の高速道路であり、三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道の3路線の総称である。東日本大震災後「復興道路」と位置付けられ、2021年(令和3年)に全線開通した(全長359キロメートル(km)・総工費2兆円)。無料区間(鳴瀬奥松島IC - 八戸是川IC)が連続330 kmを超える、日本最長の連続無料区間を有する高速道路となっている。
名称・表示
三陸沿岸道路(国道45号と宮城県道8号仙台松島線の自動車専用道路)の道路利用者向けの案内標識には三陸道(さんりくどう)が使用されている。また、東日本高速道路(使用例)、宮城県道路公社の有料区間においては「三陸自動車道」(さんりくじどうしゃどう、英語: SANRIKU EXPRESSWAY)の名称が使用されている。
高速道路ナンバリングによる路線番号は、仙台港北インターチェンジ(IC) - 利府ジャンクション(JCT)間が常磐自動車道・仙台東部道路・仙台北部道路と共に「E6」が、利府JCT - 八戸ジャンクション(JCT)間が「E45」と各区間割り当てられている。
道路の概要
宮城県仙台市宮城野区を起点とし、岩手県釜石市で東北横断自動車道釜石秋田線(東部は釜石自動車道)と連絡し、青森県八戸市に至る、約359キロメートル (km) の高速道路の総称が「三陸沿岸道路」であり、仙台市から岩手県宮古市までの区間が三陸縦貫自動車道、宮古市から久慈市までが三陸北縦貫道路、久慈市から八戸市までが八戸・久慈自動車道である。ほぼ全線が国道45号に指定されており(一部は宮城県道8号仙台松島線)、全線が自動車専用道路として整備されている。
東日本高速道路株式会社、宮城県道路公社、国土交通省が管理している。また、仙台港北IC - 利府JCT間は、常磐自動車道に並行する一般国道自動車専用道路である仙台東部道路・仙台北部道路間を結ぶ役割を担っている。
三陸沿岸地域の物流を担う事になる道路である。 仙台港北ICから八戸JCTまでの約359 kmの区間は、東日本大震災からの復興道路「三陸沿岸道路」として事業化され、2020年(令和2年)度末までに全線開通する予定であったが、岩手県北部の一部区間のトンネル工事が難航していたため、2021年(令和3年)内にずれ込み、12月18日に全線開通した。
道路名・路線名・事業名
「三陸沿岸道路」の名称は仙台港北IC - 八戸JCT間の道路名(通称名)である。
- E6 / E45 三陸縦貫自動車道(一般国道自動車専用道路(B路線))
- E45 三陸北縦貫道路(地域高規格道路)
- E45 八戸・久慈自動車道(一般国道自動車専用道路(B路線))
以上3路線を総称する道路名および事業名として2011年度より使用されている。東日本大震災からの復興を目的とした「復興道路」に位置づけられており、2011年度(平成23年度)第3次補正予算において三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道でそれまで事業化されていなかった148 kmについて同時に事業化された。各事業区間の詳細については上記3道路の記事を参照。
復興道路
2011年(平成23年)8月30日にルートが決定し、同年11月21日に三陸沿岸道路の未着手であった148 kmが事業化した。平時には暮らしを支え(医療サービス、産業、観光)、災害時には命を守る(避難、救命救急、復旧)という機能を持った道路整備を事業費圧縮と開通時期を早めるため基本設計を見直し、既に着手された未着工区間も含めて計画を完成4車線から完成2車線へ変更し、ICについても一部を除き簡易型ハーフICとしたり、ICの設置場所についても以前よりも柔軟に設置を行なった。
2011年(平成23年)11月には三陸沿岸道路とあわせて、宮古盛岡横断道路の48 km、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石 - 花巻間の17 km、東北中央自動車道相馬 - 福島間の11 kmが復興支援道路として新規に事業化されていて、いずれも無料で通行できる。
インターチェンジなど
- ICはインターチェンジ、JCTはジャンクション、PAはパーキングエリア、TBは本線料金所、CBはチェーンベースをそれぞれ示す。
- IC番号欄の背景色が■である部分については道路が供用済みの区間を示している。また、施設名欄の背景色が■である部分は施設が供用されていない、または完成していないことを示す。
- 接続路線名の特記がないものは市町村道。
- 接続路線名の※1は「国道45号」を示す。
- 接続路線名の「(間)」は他の道路を介して接続している間接接続。
- ガソリンスタンドが設置されたPAは存在しない。
- 大船渡IC - 大船渡碁石海岸IC間の大船渡病院付近に追加インターの設置が検討されている。
- 八戸自動車道の八戸ICからは当道路に乗り入れできないため、八戸JCT - 八戸是川IC間に八戸第2JCT(八戸東JCT)(仮称)の建設が要望されている。
歴史
- 1982年(昭和57年)10月2日:初原出入口 - 根廻出入口間が仙台松島有料道路として開通(現在の松島大郷IC・松島北ICに当たる)。
- 1986年(昭和61年)9月27日:利府中IC - 松島大郷IC開通により仙台松島有料道路が全線開通。
- 1993年(平成5年)
- 3月16日:新三陸トンネル開通。
- 3月25日:松島北IC - 鳴瀬奥松島IC間開通 同時に利府中IC - 鳴瀬奥松島ICを三陸自動車道に改名。
- 12月16日: 久慈IC - 久慈北IC間開通。
- 1997年(平成9年)3月27日:仙台港北IC - 利府中IC間開通。
- 1998年(平成10年)3月20日:鳴瀬奥松島IC - 石巻河南IC間開通。
- 1999年(平成11年)3月24日:大船渡IC - 新三陸トンネル(現・三陸IC)間開通。
- 2001年(平成13年)
- 6月6日:利府塩釜IC供用開始。
- 8月1日:仙台港北ICで仙台東部道路と接続。
- 2002年(平成14年)
- 5月19日:利府JCT開通により仙台北部道路と接続。
- 8月2日:山田南IC - 山田IC間開通。
- 2003年(平成15年)
- 12月12日:石巻港本線料金所開設、同時に石巻河南IC料金所廃止。
- 12月14日:石巻河南IC - 河北IC間開通。
- 2005年(平成17年)
- 3月5日: 八戸南IC - 八戸是川IC間開通。
- 3月19日:大船渡碁石海岸IC - 大船渡IC間開通。
- 10月1日:日本道路公団の分割民営化により日本道路公団の管理区間が東日本高速道路株式会社に承継。
- 2006年(平成18年)2月11日: 鵜の巣断崖IC - 田野畑村大芦間開通。
- 2007年(平成19年)
- 6月9日:河北IC - 桃生津山IC間開通。
- 6月16日: 種差海岸階上岳IC - 八戸南IC間開通。
- 2008年(平成20年)1月24日:鳴瀬奥松島IC - 石巻河南IC間が料金徴収期間が満了に伴い無料開放。このため、鳴瀬奥松島本線料金所開設。同時に鳴瀬奥松島IC料金所・矢本IC料金所・石巻港IC料金所・石巻港本線料金所廃止。東日本高速道路株式会社から東北地方整備局へ移管。
- 2009年(平成21年)
- 3月15日:通岡IC - 大船渡碁石海岸IC間開通。
- 3月22日:桃生津山IC - 登米IC間開通。
- 2010年(平成22年)
- 3月21日:宮古南IC - 宮古中央IC間開通。
- 3月22日:登米IC - 登米東和IC間開通。
- 7月15日:船河原PA供用開始。
- 10月22日:利府JCTの仙台北部道路 利府しらかし台IC方面 ⇔ 利府塩釜IC方面との連絡路の供用開始に伴いフルJCT化完了。
- 11月28日: 岩泉龍泉洞IC - 鵜の巣断崖IC間開通。
- 12月19日:気仙沼市只越(現・唐桑半島IC) - 気仙沼市館(現・唐桑小原木IC)間開通。将来、この両仮出入口は閉鎖され、ごく近い場所に、改めて仙台方向のみ出入り可能なICが設置される予定。
- 2011年(平成23年)
- 3月5日:釜石両石IC - 釜石北IC間開通。
- 3月11日:東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)発生により通行止。
- 3月30日:東北地方太平洋沖地震から早期復旧完了により全面開通。
- 2012年(平成24年)
- 7月12日:利府中IC - 松島海岸IC間4車線化。
- 8月8日:春日PA供用開始。
- 2013年(平成25年)
- 3月9日: 階上IC - 種差海岸階上岳IC間開通。
- 10月13日: 普代村第11地割 - 普代村第16地割間開通。
- 2014年(平成26年)
- 3月2日: 田野畑村田野畑 - 同村尾肝要間開通。
- 3月23日:陸前高田IC - 通岡IC間開通。
- 3月25日:松島海岸IC - 松島北IC間4車線化。
- 3月29日: 八戸是川IC - 八戸JCT間開通。八戸自動車道と接続。同時に八戸JCT料金所が開設。
- 2015年(平成27年)
- 3月30日:松島北IC - 鳴瀬奥松島IC間4車線化。
- 3月31日:鳴瀬奥松島IC - 石巻河南IC間下り線2車線化。
- 10月4日:石巻女川IC供用開始。鳴瀬奥松島IC - 石巻女川IC間4車線化。
- 11月29日:三陸IC - 吉浜IC間開通。
- 2016年(平成28年)
- 3月5日:仙台港北IC - 利府JCT間下り線2車線化。
- 3月27日:仙台港北IC - 利府JCT間4車線化完了および多賀城IC供用開始。
- 4月16日:登米東和IC - 三滝堂IC間開通。
- 10月30日:三滝堂IC - 志津川IC間開通。
- 2017年(平成29年)
- 3月20日:志津川IC - 南三陸海岸IC間開通。
- 3月30日:石巻女川IC - 桃生豊里IC間4車線化。
- 11月19日:山田IC - 宮古南IC間開通。
- 12月9日:南三陸海岸IC - 歌津IC間開通。
- 2018年(平成30年)
- 3月21日:田老真崎海岸IC - 岩泉龍泉洞IC間開通により三陸北縦貫道路と接続。
- 3月25日:大谷海岸IC - 気仙沼中央IC間開通。
- 7月28日:陸前高田長部IC - 陸前高田IC間開通。
- 8月11日:吉浜IC - 釜石南IC間開通。
- 2019年(平成31年 / 令和元年)
- 1月12日:大槌IC - 山田南IC間開通。
- 2月16日:歌津IC - 小泉海岸IC間、本吉津谷IC - 大谷海岸IC間開通。
- 3月9日:釜石南IC - 釜石両石IC間開通。
- 3月21日:唐桑小原木IC - 陸前高田長部IC間開通。
- 6月22日:釜石北IC - 大槌IC間開通。
- 2020年(令和2年)
- 2月24日:気仙沼中央IC - 気仙沼港IC間開通。
- 3月1日: 久慈北IC - 侍浜IC間開通。
- 7月12日:宮古中央JCT - 田老真崎海岸IC間開通。
- 11月21日:小泉海岸IC - 本吉津谷IC間開通。
- 12月12日: 洋野種市IC - 階上IC間開通。
- 12月19日: 田野畑村尾肝要 - 普代村第11地割間開通。
- 2021年(令和3年)
- 3月6日:気仙沼港IC - 唐桑半島IC間開通。
- 3月20日: 侍浜IC - 洋野種市IC間開通。
- 7月10日: 田野畑村大芦 - 同村田野畑間開通。
- 12月18日: 普代村第16地割 - 久慈IC間開通により全線開通。
路線状況
車線・最高速度・料金
※1:…制限速度(指定速度)。大型貨物車等・三輪・牽引車は80 km/h、最低速度は50 km/h。 ※2:暫定2車線。 ※3:完成2車線。 ※4:中央分離帯付き。
三陸自動車道は区間によって道路規格、道路管理者が異なる(宮城県道路公社、東日本高速道路株式会社、国土交通省)ため、最高速度が異なる。また、鳴瀬奥松島本線料金所・八戸JCT料金所付近は40 km/h、一部区間には分離帯(鉄柵、ガードレール、コンクリート、ワイヤロープ等)が設置されているため80 km/hとなっている。
休憩施設
道路管理者の三陸国道事務所と南三陸沿岸国道事務所からドライバー向けの情報MAPが提供されていて、2023年4月現在では以下の通りになっている。サービスエリアとガソリンスタンドの設置されたパーキングエリアは存在しない。
有料区間内のPAは春日PAの1箇所のみで標準的なPAの施設が揃っている。無料区間内(鳴瀬奥松島IC - 八戸是川IC)に存在するPAは矢本PAと本吉PAを除いて施設は駐車場のみとなっている。無料区間内のICにおいては「出入りに料金が発生しない」という利点を生かして、一般道の休憩施設と隣接か近接する形で整備を行い、施設にPAの代替機能を持たせた例が多くみられる。
主な構造物
トンネルと橋
(出典:仙台港北IC - 利府中IC間は「高速道路のインフラ長寿命化計画(行動計画)」
(nexco東日本ホームページ)・「国道45号 三陸沿岸道路 仙塩道路(仙台港北IC - 利府中IC)」
(国土交通省ホームページ)より
利府中IC - 鳴瀬奥松島IC間は「仙台松島道路橋梁長寿命化修繕計画(令和2)2020)年4月改訂版))」
(宮城県道路公社ホームページ)より
それ以外は
「橋梁の長寿命化修繕計画 [令和元年度版] - 国土交通省 東北地方整備局」・
「東北地方整備局 道路トンネル個別施設計画 [令和元年度版]」・
2020年4月以降開通分は
「国道45号 三陸沿岸道路 歌津本吉道路(小泉海岸IC〜本吉津谷IC)」・
「国道45号 三陸沿岸道路 気仙沼道路(気仙沼港IC - 唐桑半島IC)」・
「国道45号 三陸沿岸道路 宮古田老道路(宮古中央JCT - 田老真崎海岸IC)」
・「国道45号 三陸沿岸道路 田野畑道路」・
「国道45号 三陸沿岸道路 尾肝要普代道路」・
「国道45号 三陸沿岸道路 野田久慈道路」
・「国道45号 三陸沿岸道路 洋野階上道路(侍浜〜階上)」
(いずれも国土交通省ホームページ)より)
トンネルの数
※桃生豊里IC以北は暫定2車線(※印の区間は完成2車線)であるため、上下線で1本のトンネルとなっている。
道路管理者
- 東日本高速道路株式会社
- 東北支社仙台管理事務所:仙台港北IC - 利府中IC
- 宮城県道路公社:利府中IC - 鳴瀬奥松島IC
- 国土交通省
- 東北地方整備局
- 南三陸沿岸国道事務所
- 三陸道維持出張所:鳴瀬奥松島IC - 陸前高田長部IC
- 大船渡維持出張所:陸前高田長部IC - 山田南IC
- 三陸国道事務所
- 宮古西維持出張所:山田南IC - 宮古北IC
- 宮古維持出張所:宮古北IC - 普代IC
- 久慈維持出張所:普代IC - 階上IC
- 青森河川国道事務所
- 八戸国道出張所:階上IC - 八戸JCT
- 南三陸沿岸国道事務所
- 東北地方整備局
交通量
24時間交通量(台)道路交通センサス
{{Smaller(出典:国土交通省ウェブサイト「平成22年度道路交通センサス」「平成27年度全国道路・街路交通情勢調査」・「令和3年度全国道路・街路交通情勢調査」より一部データを抜粋して作成)}}
※ 唐桑半島ICは、仙台方面開通発表時までは、気仙沼市唐桑町只越。
※ 唐桑小原木ICは、宮古方面開通発表時までは、気仙沼市唐桑町館。
※平成27年度調査時は、田野畑北ICは完成しておらず、普代村第11地割 - 普代ICの供用であった。
地理
通過する自治体
- 宮城県
- 仙台市(宮城野区) - 多賀城市 - 宮城郡利府町 - 宮城郡松島町 - 東松島市 - 宮城郡松島町 - 東松島市 - 宮城郡松島町 - 東松島市 - 石巻市 - 登米市 - 本吉郡南三陸町 - 気仙沼市
- 岩手県
- 陸前高田市 - 大船渡市 - 釜石市 - 上閉伊郡大槌町 - 下閉伊郡山田町 - 宮古市 - 下閉伊郡岩泉町 - 同郡田野畑村 - 同郡普代村 - 九戸郡野田村 - 久慈市 - 九戸郡洋野町
- 青森県
- 三戸郡階上町 - 八戸市
接続する高速道路
- E6 仙台東部道路(仙台港北ICで直結)
- E6 仙台北部道路(利府JCTで接続)
- みやぎ県北高速幹線道路(登米ICで一般道を介して接続)
- E46 釜石自動車道(釜石JCTで接続)
- 宮古盛岡横断道路(宮古中央JCTで接続)
- E4A 八戸自動車道(八戸JCTで接続)
脚注
注釈
出典
報道・その他メディア
一次資料または記事主題の関係者による情報源
国土交通省
NEXCO東日本
宮城県道路公社
沿道自治体
関連項目
- 高規格幹線道路
- 東北地方の道路一覧
外部リンク
- いよいよ 前線開通へ 震災・復興10年 進もう!次の東北へ(復興道路・復興支援道路開通告知特設サイト)
- 東日本高速道路株式会社:仙台港北IC - 利府中IC間を管轄
- 宮城県道路公社:利府中IC - 鳴瀬奥松島IC間を管轄
- 国土交通省 東北地方整備局
- 南三陸沿岸国道事務所
- 三陸道維持出張所:鳴瀬奥松島IC - 陸前高田長部IC間を管轄
- 大船渡維持出張所:陸前高田長部IC - 山田南IC間を管轄
- 三陸国道事務所
- 宮古西維持出張所 :山田南IC - 宮古北IC間を管轄
- 宮古維持出張所:宮古北IC - 普代IC間を管轄
- 久慈維持出張所:普代IC - 階上IC間を管轄
- 青森河川国道事務所
- 八戸国道出張所:階上IC - 八戸JCT間を管轄
- 南三陸沿岸国道事務所
- 三陸沿岸道路に関連する地理データ - オープンストリートマップ