交響曲第104番 ニ長調 Hob. I:104 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1795年に作曲した交響曲。イギリス訪問時のロンドンで作曲された、いわゆる『ロンドン交響曲』のうちの1曲であり、ハイドンが作曲した最後の交響曲である。ハイドンの代表作の一つであり、『ロンドン』(London)または『ザロモン』(Salomon)の愛称で知られる。
概要
ハイドンは自筆譜に「私がイギリスで作曲した12番目(の交響曲)」と記しているが、実際には12曲の『ロンドン交響曲』のうち第99番などがウィーンで作曲されているため、この記述は正しくない。
初演は1795年5月4日の慈善コンサートで行われたといわれてきた。ハイドンはこの日の日記に「すべての観客も私も余すところなく楽しんだ。私はこの夜に4000グルデンの収入を得た。これはイギリスだからこそ可能だった」 と記していることから、この日に演奏されたことは確かである。しかし、ハイドン研究家のロビンス・ランドンは、4月13日の第6回オペラコンサートで初演されているとしている。
愛称の由来
『ロンドン』(または『ザロモン』)という愛称はハイドン自身によるものではなく、19世紀になってから付けられたものであるが、本作だけでなく、本作を含む全12曲の『ロンドン交響曲』全てがロンドンに関係しているので、この愛称に特別な意味はない。
また、終楽章の冒頭で奏でられるドローンの特徴から、古くは『バグパイプ付き』といった意味の "mit dem Dudelsack" という愛称で呼ばれることもあった。
楽器編成
曲の構成
全4楽章、演奏時間は約30分。
- 第1楽章 アダージョ - アレグロ
- ニ短調 - ニ長調、4分の4拍子 - 2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、序奏付きのソナタ形式。
- 壮大なニ短調の序奏部で始まり、提示部は弦楽器によるニ長調の第1主題の提示で始まる。複雑な転調をせずに、まっすぐイ長調に転調して第1主題を再び木管楽器で提示する。第2主題はイ長調で木管楽器と弦楽器で提示される。提示部は小結尾で閉じ、第1主題の後半のリズムを使ってロ短調で始まる展開部に入る。展開部はオーケストラの全奏で閉じる。再現部では第1主題がニ長調で再現する。最後はニ長調のコーダで閉じる。
- 第2楽章 アンダンテ
- ト長調、4分の2拍子、変奏曲形式。
- ト長調の弦による主題で始まる。この後、イ短調とニ短調を経由した後、弦楽器とファゴットで主要主題が繰り返される。第1変奏ではト短調や変ロ長調など様々な調に転調するが、主題の旋律の要素が続いている。ト長調の属調に達した後、第2変奏になる。フルートのソロの後の第3変奏は短く、そのままコーダへ続く。
- 第3楽章 メヌエット:アレグロ - トリオ
- ニ長調 - 変ロ長調、4分の3拍子、複合三部形式。
- メヌエット部分は三部形式(A-B-A)であり、Aでは主和音が強調されている。Bの部分は平行短調(ロ短調)や属調(イ長調)に転調する。
- トリオは変ロ長調で、オーボエやファゴットが長く用いられる。メヌエットのように、トリオの中間部は平行短調(この場合はト短調)が目立つ。トリオは属調で締めくくられ、メヌエットに復帰する。
- 第4楽章 フィナーレ:スピリトーソ
- ニ長調、2分の2拍子(アラ・ブレーヴェ)、ソナタ形式。
- 元気の良い快速なソナタ形式である。ドローンが使われた民謡風の主題で始まるが、これはクロアチア民謡の "OjJelena" に基づくといわれている(詳しくは「en:Haydn and folk music」を参照)。展開部は定型通りに主調の属調に落ち着くが、再現部がすぐには始まらないのが異例である。その代わりに、展開部は嬰ヘ短調の部分に続き、その後で直ちにニ長調の再現部が始まる。
注釈
外部リンク
- 交響曲第104番 ニ長調 Hob. I:104『ロンドン』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
ウィキメディア・コモンズには、交響曲第104番 (ハイドン)に関するカテゴリがあります。