第80回アカデミー賞(だい80かいアカデミーしょう)は、2008年2月24日に発表・授賞式が行われた。司会はコメディアンのジョン・スチュワート。

作品賞を受賞したのは『ノーカントリー』。候補作は『つぐない』、『JUNO/ジュノ』、『フィクサー』、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。

概要

対象となるのは2007年中にロサンゼルスで封切られ、1週間以上商業公開が行われた映画。5829人の会員が投票権を持つ。

授賞式の開催場所は7回目となるコダック・シアター、中継は2014年までの契約が完了しているABCで33回目。

司会は前々回も努めたジョン・スチュワート。2006年8月に開催された第58回プライムタイム・エミー賞で司会を務めた矢先の起用である。プロデューサーは前々回以来14回目のギル・ゲイツ。演出は第69回から12年連続のルイス・J・ホーヴィッツ。

2007年12月12日に、『北北西に進路を取れ』などで4度美術賞候補になったロバート・ボイルに対して、名誉賞が授与されることが発表。美術監督が名誉賞を受賞するのは史上初である。

今回、アカデミー賞は80周年を迎えることもあり、公式のポスターと80周年を記念したポスターの二通りが発表された。前者は「スター・ウォーズ」シリーズのポスターのイラストレーターで知られるドゥルー・ストゥルーザンと彼の息子のクリスチャンがデザインし、黒の背景に後ろからフラッシュを浴びる金色のオスカー像を中心にそえたデザインとなっている。後者はこれまで作品賞を受賞した作品のポスターが螺旋状に連なってオスカー像を形成しており、最後の80作目の位置は発表前の現在はクエッションマークとなっている。

現在、2007年11月からの全米脚本家組合のストライキにより、テレビ中継用の脚本が書けない状況であるため、授賞式の開催が危ぶまれる状況であるが、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは予定通り開催することを明言している。

この年の候補作品にはR指定を受けた流血描写の多い暴力的な作品が多くノミネートされている。

主な日程

以下の時間は全てPST(太平洋標準時)である。

  • 2007年
    • 12月26日 - 候補投票の用紙を発送
  • 2008年
    • 1月12日 - 候補投票の締め切り (午後5時)
    • 1月22日 - 候補を発表 (午前5時30分)
    • 1月30日 - 最終投票の用紙を発送
    • 2月9日 - 科学技術賞の授賞式を開催
    • 2月19日 - 最終投票の締め切り (午後5時)
    • 2月24日 - 第80回アカデミー賞の授賞式を開催

(参考:General Timetable)

候補について

発表は2008年1月22日午前5時30分(PST)より、サミュエル・ゴールドウィン・シアターで発表された。会長のシド・ギャニスと共に発表を担当した俳優はキャシー・ベイツで、登場まで明かされなかった。

最多候補となったのは、作品賞候補にもなった『ノーカントリー』と『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の2作品で8部門となる。両者は2部門を除いて同じ賞を争うことになる。

演技部門では、助演男優賞候補のハル・ホルブルックが82歳と339日での候補となり、男優の史上最年長候補記録となった(これまでの男優の最年長候補記録はラルフ・リチャードソンの82歳と49日、女優も含めるとグロリア・スチュアートの87歳と221日)。授賞式時には83歳となり、もし受賞を果たせば受賞記録も更新する。同じく助演女優賞で候補となったルビー・ディーも83歳での候補であり、同様に受賞を果たせば記録更新となる。また、80歳以上の俳優が複数人候補になったのは、史上初の出来事。

ケイト・ブランシェットは、演技部門で2部門候補となった史上11人目の俳優となった。助演女優賞候補は前年の『あるスキャンダルの覚え書き』に続く2年連続。主演女優賞での候補作『エリザベス:ゴールデン・エイジ』で演じたエリザベス1世役は、9年前の前作『エリザベス』でも同役で候補となっている。同じ役でのアカデミー賞候補は、ビング・クロスビー、ピーター・オトゥール(ヘンリー2世の役を別々の映画で2度演じて候補になった)、アル・パチーノ、ポール・ニューマンに次ぐ、5人目となった。女優では初となる。更に助演女優賞の『アイム・ノット・ゼア』で候補となったのは男性の役であり、女優が男性を演じて候補になったのは『危険な年』で受賞もしたリンダ・ハント以来2人目となる(身体的には男性である役を含めば、『トランスアメリカ』のフェリシティ・ハフマンなどもいる)。

コーエン兄弟は、『ノーカントリー』で作品賞・監督賞・脚色賞候補となり、変名のロデリック・ジェインズ名義でも編集賞候補になったため、1作品から4部門で候補になったことになる。3部門で候補になることは珍しくはないが4部門(1つの部門で複数候補になったのは含まない)は稀であり、これはウォーレン・ベイティが『天国から来たチャンピオン』と『レッズ』で2度成し遂げて以来の快挙である。また、監督賞でコンビで候補になったのは、これまた『天国から来たチャンピオン』のウォーレン・ベイティとバック・ヘンリー以来となる3組目であった。

撮影賞では、ロジャー・ディーキンスが『ノーカントリー』と『ジェシー・ジェームズの暗殺』の2作で候補になった。撮影賞での2作同時候補は1972年開催の第45回アカデミー賞でロバート・サーティースが成し遂げて以来35年ぶりとなった(ちなみにこの時サーティスは受賞しなかった)。歌曲賞では、前年の『ドリームガールズ』に続いて、『魔法にかけられて』が3つ候補を独占。どの曲とも作詞・作曲はアラン・メンケンとスティーヴン・シュワルツのコンビであり、両者とも3候補を得ることになった。衣装デザイン賞候補のマリット・アレンは、前年の11月に亡くなっているため死後の候補となっている。録音賞で候補になったケヴィン・オコネル(『トランスフォーマー』)は実に20度目のノミネートであるが、未受賞である。

日本関係として、前年に引き続き辻一弘が『マッド・ファット・ワイフ』でメイクアップ賞候補になった。日本人の二年連続候補は史上初となる。また外国語映画賞で、浅野忠信が主演した『モンゴル』(カザフスタンからのエントリー)が候補になっている。

統計

候補と受賞の一覧

太字は受賞である。

また、以下での人名表記は

  1. 作品の日本語公式情報およびAMPAS公式サイトの日本版とWOWOWによる授賞式放送での表記に準ずる。
  2. 見当たらない場合はデータベースサイトなどを参考。
  3. それでもない場合は英語表記のままとする。

作品賞

  • つぐない
  • JUNO/ジュノ
  • フィクサー
  • ノーカントリー
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

監督賞

  • 潜水服は蝶の夢を見る - ジュリアン・シュナーベル
  • JUNO/ジュノ - ジェイソン・ライトマン
  • フィクサー - トニー・ギルロイ
  • ノーカントリー - ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド - ポール・トーマス・アンダーソン

主演男優賞

  • ジョージ・クルーニー - フィクサー
  • ダニエル・デイ=ルイス - ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
  • ジョニー・デップ - スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
  • トミー・リー・ジョーンズ - 告発のとき
  • ヴィゴ・モーテンセン - イースタン・プロミス

主演女優賞

  • ケイト・ブランシェット - エリザベス:ゴールデン・エイジ
  • ジュリー・クリスティ - アウェイ・フロム・ハー君を想う
  • マリオン・コティヤール - エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜
  • ローラ・リニー - マイ・ライフ、マイ・ファミリー
  • エリオット・ペイジ - JUNO/ジュノ

助演男優賞

  • ケイシー・アフレック - ジェシー・ジェームズの暗殺
  • ハビエル・バルデム - ノーカントリー
  • フィリップ・シーモア・ホフマン - チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
  • ハル・ホルブルック - イントゥ・ザ・ワイルド
  • トム・ウィルキンソン - フィクサー

助演女優賞

  • ケイト・ブランシェット - アイム・ノット・ゼア
  • ルビー・ディー - アメリカン・ギャングスター
  • シアーシャ・ローナン - つぐない
  • エイミー・ライアン - ゴーン・ベイビー・ゴーン
  • ティルダ・スウィントン - フィクサー

脚本賞

  • JUNO/ジュノ - ディアブロ・コーディ
  • ラースと、その彼女 - ナンシー・オリバー
  • フィクサー - トニー・ギルロイ
  • レミーのおいしいレストラン - ブラッド・バード(脚本・ストーリー)、ヤン・ピンカヴァ、ジム・カポビアンコ(ストーリー)
  • マイ・ライフ、マイ・ファミリー - タマラ・ジェンキンス

脚色賞

  • つぐない - クリストファー・ハンプトン
  • アウェイ・フロム・ハー君を想う - サラ・ポーリー
  • 潜水服は蝶の夢を見る - ロナルド・ハーウッド
  • ノーカントリー - ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド - ポール・トーマス・アンダーソン

撮影賞

  • ジェシー・ジェームズの暗殺 - ロジャー・ディーキンス
  • つぐない - シェイマス・マクガーヴェイ
  • 潜水服は蝶の夢を見る - ヤヌス・カミンスキー
  • ノーカントリー - ロジャー・ディーキンス
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド - ロバート・エルスウィット

編集賞

  • ボーン・アルティメイタム - クリストファー・ラウズ
  • 潜水服は蝶の夢を見る - ジュリエット・ウェルフリング
  • イントゥ・ザ・ワイルド - ジェイ・キャシディ
  • ノーカントリー - ロデリック・ジェインズ
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド - ディラン・ティチェナー

美術賞

  • アメリカン・ギャングスター - アーサー・マックス(美術監督)、ベス・A・ルビノ(装置)
  • つぐない - サラ・グリーンウッド(美術監督)、ケイティ・スペンサー(装置)
  • ライラの冒険 黄金の羅針盤 - デニス・ガスナー(美術装置)、アナ・ピノック(装置)
  • スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 - ダンテ・フェレッティ(美術監督)、フランシスカ・ロ・スキアボ(装置)
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド - ジャック・フィスク(美術監督)、ジム・エリクソン(装置)

衣装デザイン賞

  • アクロス・ザ・ユニバース - アルバート・ウォルスキー
  • つぐない - ジャクリーヌ・デュラン
  • エリザベス:ゴールデン・エイジ - アレクサンドラ・バーン
  • エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜 - マリット・アレン
  • スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 - コリーン・アトウッド

メイクアップ賞

  • エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜 - Didier LavergneJan Archibald
  • マッド・ファット・ワイフ - リック・ベイカー、辻一弘
  • パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド - Ve Neill、Martin Samuel

作曲賞

  • つぐない - ダリオ・マリアネッリ
  • 君のためなら千回でも - アルベルト・イグレシアス
  • フィクサー - ジェームズ・ニュートン・ハワード
  • レミーのおいしいレストラン - マイケル・ジアッチーノ
  • 3時10分、決断のとき - マルコ・ベルトラミ

歌曲賞

  • "Falling Slowly" 作詞・作曲: グレン・ハンサードマルケタ・イルグロヴァ - ONCE ダブリンの街角で
  • "歌ってお仕事(Happy Working Song)" 作曲: アラン・メンケン、作詞: スティーヴン・シュワルツ - 魔法にかけられて
  • "Raise It Up" 作詞・作曲:Jamal Joseph、Charles Mack、Tevin Thomas - 奇跡のシンフォニー
  • "そばにいて(So Close)" 作曲: アラン・メンケン、作詞: スティーヴン・シュワルツ - 魔法にかけられて
  • "想いを伝えて(That's How You Know)" 作曲: アラン・メンケン、作詞: スティーヴン・シュワルツ - 魔法にかけられて

録音賞

  • ボーン・アルティメイタム - Scott MillanDavid ParkerKirk Francis
  • ノーカントリー - Skip Lievsay、Craig Berkey、Greg Orloff、Peter Kurland
  • レミーのおいしいレストラン - Randy Thom、Michael Semanick、Doc Kane
  • 3時10分、決断のとき - Paul Massey、David Giammarco、Jim Stuebe
  • トランスフォーマー - ケヴィン・オコネル、グレッグ・P・ラッセル、Peter J. Devlin

音響編集賞

  • ボーン・アルティメイタム - Karen Baker LandersPer Hallberg
  • ノーカントリー - Skip Lievsay
  • レミーのおいしいレストラン - Randy Thom、Michael Semanick
  • ゼア・ウィル・ビー・ブラッド - マシュー・ウッド
  • トランスフォーマー - Ethan Van der Ryn、マイク・ホプキンス

視覚効果賞

  • ライラの冒険 黄金の羅針盤 - Michael Finkビル・ウェステンホファーベン・モリスTrevor Wood
  • パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド - ジョン・ノール、ハル・ヒッケル、チャールズ・ギブソン、ジョン・フレイザー
  • トランスフォーマー - スコット・ファーラー、スコット・ベンザ、ラッセル・アール、ジョン・フレイザー

外国語映画賞

  • ボーフォート -レバノンからの撤退- - イスラエル (監督: ヨセフ・シダー)
  • ヒトラーの贋札 - オーストリア (監督: シュテファン・ルツォヴィツキー)
  • カティンの森 - ポーランド (監督: アンジェイ・ワイダ)
  • モンゴル - カザフスタン (監督: セルゲイ・ボドロフ)
  • 12人の怒れる男 - ロシア (監督: ニキータ・ミハルコフ)

長編アニメ映画賞

  • ペルセポリス - マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
  • レミーのおいしいレストラン - ブラッド・バード
  • サーフズ・アップ - アッシュ・ブラノン、クリス・バック

長編ドキュメンタリー映画賞

  • No End in Sight - Charles Ferguson(監督)、Audrey Marrs(プロデューサー)
  • Operation Homecoming: Writing the Wartime Experience - リチャード・E・ロビンス(監督)
  • シッコ - マイケル・ムーア(監督)、メガン・オハラ(プロデューサー)
  • 「闇」へ - アレックス・ギブニー(監督)、Eva Orner(プロデューサー)
  • ウォー・ダンス - アンドレア・ニックス・ファイン、ショーン・ファイン(監督)

短編ドキュメンタリー映画賞

  • フリーヘルド - シンシア・ウェイドヴァネッサ・ロス
  • La Corona (The Crown) - Amanda Micheli and Isabel Vega
  • Salim Baba - Tim Sternberg、Francisco Bello
  • Sari's Mother - ジェームズ・ロングリー

短編アニメ映画賞

  • セイウチと出会う - ジョシュ・ラスキン
  • マダム・トゥトリ・プトリ - Chris Lavis、Maciek Szczerbowski
  • Même Les Pigeons Vont au Paradis - Samuel Tourneux、Simon Vanesse
  • 春のめざめ (2006年の映画) - アレクサンドル・ペトロフ
  • ピーターと狼 - スージー・テンプルトンヒュー・ウェルクマン

短編実写映画賞

  • At Night - Christian E. Christiansen、Louise Vesth
  • 代理教師 - アンドレア・ユブリン
  • ピックポケット - フィリップ・ポレ=ヴィラール
  • タンゴ・アルゼンチン - Guido Thys、Anja Daelemans
  • The Tonto Woman - Daniel Barber、Matthew Brown

プレゼンター

エピソード

  • パリス・ヒルトンは授賞式の為に4億円するドレスを用意していたが、授賞式への出入りを禁止された。
  • アカデミー賞の前に発表されたゴールデンラズベリー賞で前代未聞の8冠に輝いたリンジー・ローハンは、授賞式後、ハリウッドの各地で行われたアフターパーティに1つも誘われなかった為、立腹していたとThe Mirrorが報じた。

外部リンク

  • 80th Annual Academy Awards AMPASによる概要ページ

脚注


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