半落ち』(はんおち)は、横山秀夫の小説。またそれを原作とするテレビ・映画作品である。

「半落ち」の原義は警察用語で、「一部自供した」という意味である。

受賞歴等

小説は2003年第128回直木賞の最終選考過程まで残るものの落選した。選考後、一部選考委員から「致命的欠点が存在」と指摘され、議論を巻き起こした(詳細については横山秀夫の項を参照)。作品は辛辣な批評を受けたものの、読者の好意的な評価を得てベストセラーになるとともに、2003年週刊文春ミステリーベスト10第1位に選ばれている。

小説を原作とした映画は、2005年第28回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、主演の寺尾聰は最優秀主演男優賞を獲得するに至っている。音楽担当の寺嶋民哉も優秀音楽賞を受賞。

また、テレビドラマ版は2007年12月8日に『土曜ワイド劇場』30周年・放送1500回記念特別企画としてテレビ朝日系列で放送された(BS朝日でも2008年1月20日に放送された)。

ストーリー

「私、梶聡一郎は、3日前、妻の啓子を、自宅で首を絞めて、殺しました」

県警捜査一課強行犯係指導官、志木和正警視は、連続少女暴行事件の捜査に当たっていた。犯人確保の電話を待つが、かかってきた電話の内容は、上司からの「現職警察官による、妻の殺人の取り調べを担当せよ」という依頼だった。自首してきた犯人、元警察官の梶聡一郎は、アルツハイマー病に侵された妻の啓子を殺害した動機、経緯についてすべて正直に話し、事件は「完落ち」で終わるかに見えた。

だが、事件が発生してから出頭するまでの「空白の二日間」について、梶は一切の供述を拒否する。その後、家宅捜索と新聞社によって、「空白の二日間」に梶は歌舞伎町へ行ったらしい事がわかった。また、梶の自宅には「人間五十年」という奇妙な書が残されていた。「空白の二日間」の供述をじっくりと取ればよい、と考えていた志木だが、「歌舞伎町」の悪いイメージが独り歩きすることを恐れた上層部は、保身のため、梶に虚偽の供述をさせるよう志木に強制する。

事件は検察にまわされ、志木と面識のある地方検察庁三席検事、佐瀬銛男は、供述が捏造であることを見抜き、警察内部の調査を進めようとする。志木に捜査を託された佐瀬は、県警に無断で検察による梶の家宅捜索を行うが、肝心な物証はすでに県警に持ち去られた後だった。いよいよ警察本部の調査に乗り出そうとしたとき、横領の疑いで以前から内偵を受けていた検察内部の人間が、置き引きにより県警に逮捕される。上位捜査機関である検察の人間が、下位組織の警察に逮捕されるなどということは、検察にとってあってはならない恥辱である。県警は検察に「逮捕は検察内部の調査により行われた」こととする代わりに、梶の事件について、供述の捏造を黙認するよう取引を持ちかけた。検察は取引に応じ、県警の不正を暴こうとした佐瀬の努力は闇に葬られる。

偶然にも、佐瀬の口論を聞いてしまった東洋新聞支局記者 中尾洋平は、独自に調査を開始し、梶聡一郎の「空白の二日間」と「供述の捏造」を説明するための情報を集め始める。駆け引きの末、ついに一大スクープを得たが、警察、検察の隠蔽にあい、立ち消えとなってしまう。

佐瀬と同期生の居候弁護士 植村学は、被害者の姉(=梶の義姉)である島村康子に、梶の弁護を引き受けたいと持ちかける。その裏には『人権派で名を上げたい』という考えがあった。梶の私選弁護人となった植村は、島村から梶は歌舞伎町に行ったことをつかむが、梶からは証言を得ることができなかった。この不完全な証言では不利になると考えた植村は、島村の証言を公表しなかった。

時間がたち、事件も忘れ去られたころ、裁判官の藤林圭吾は、この事件の担当になる。警察発表に疑念を持ちつつ、初公判に臨むが、警察、検事、弁護士までが、「空白の二日間」について口をつぐんでいた。現実に藤林は驚愕するが、高名な裁判官だった父もアルツハイマー病に侵されており、梶の妻のように「自分がまともなうちに殺してくれ」と、妻に頼んでいたことを知る。裁判で、佐瀬は梶を厳しく糾弾しながらも、懲役4年という短い求刑をする。藤林は真相の解明を諦め、その求刑を受諾することにした。

定年間近の刑務官 古賀誠司は、新しく迎えたおかしな受刑者、梶聡一郎の処遇に困っていた。そこに志木という男からたびたび電話が入るようになる。そして遂に志木は、「人間五十年」の謎の解明に成功する。

映画

新聞記者の中尾洋平が、「中尾洋子」として女性記者に変更されている。

2005年3月23日にTBS系列の「水曜プレミア」でテレビで初めて放送された。2007年12月27日にテレビで再放送されて、視聴率は11.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

出演者

  • 梶聡一郎(元県警警務部教養課次席・警部):寺尾聰
  • 志木和正(県警捜査第一課強行犯係指導官・警視):柴田恭兵
  • 佐瀬銛男(地検検事):伊原剛志
  • 梶啓子(聡一郎の妻):原田美枝子
  • 島村康子(啓子の姉):樹木希林
  • 中尾洋子(新聞記者):鶴田真由
  • 藤林圭吾(裁判官特例判事補):吉岡秀隆
  • 藤林澄子(藤林の妻):奥貫薫
  • 藤林圭一(元裁判官で藤林の父):井川比佐志
  • 辻内(裁判長):本田博太郎
  • 片桐時彦(洋子の上司):田辺誠一
  • 植村学(弁護士):國村隼
  • 植村亜紀子(学の妻):高島礼子
  • 高木ひさ江(啓子の主治医):奈良岡朋子
  • 笹岡(県警警務部長):斎藤洋介
  • 鈴木孝夫(地検検察事務官):田山涼成
  • 岩村肇(県警刑事部長):石橋蓮司
  • 加賀美康博(県警本部長):嶋田久作
  • 古賀誠司(刑務官):笹野高史
  • 小国鼎(地検検事正):西田敏行

その他

  • 高野しず子:岩本多代
  • 伊予数男:中村育二
  • 池上一志:高橋一生
  • 梶俊哉(梶夫妻の息子):石田法嗣
  • 嶋尾康史、豊原功補、寺杣昌紀、加藤満、小川敏明、永倉大輔、並樹史朗、永井杏、久保田智子 ほか

スタッフ

  • 監督:佐々部清
  • 脚本:田部俊行、佐々部清
  • 音楽:寺嶋民哉
  • 撮影:長沼六男
  • 美術:山崎秀満
  • 照明:吉角荘介
  • 録音:高野泰雄
  • 編集:大畑英亮
  • 助監督:高橋浩
  • 製作担当:林周治
  • スクリプター:江口由紀子
  • 音響効果:佐々木英世(東洋音響)
  • 現像:東映ラボ・テック
  • ロケ協力:高崎市、高崎フィルム・コミッション、富岡市、水上町 ほか
  • 企画:坂上順、近藤邦勝
  • 企画協力:近藤晋
  • プロデューサー:中曽根千治、小島吉弘、菊地淳夫、濱名一哉、長坂勉
  • 協力:骨髄移植推進財団
  • 製作プロダクション:東映東京撮影所
  • 製作:「半落ち」製作委員会(東映、TBS、住友商事、東京都ASA連合)

テレビドラマ

テレビ朝日系列の2時間ドラマ『土曜ワイド劇場』(土曜21:00 - 23:21、JST)で30周年特別企画として2007年12月8日に放送された。主演は椎名桔平。

志木目線でストーリーが進み、志木が梶の元部下という設定が追加されている。また、尺の都合もあって裁判のエピソードはカットされており、弁護士の植村と裁判官の藤林は登場しない。ただし、藤林の設定の一部は志木に取り入れられている。視聴率は18.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

出演者

  • 志木和正(長野県警察本部刑事部強行犯担当指導官・警視):椎名桔平
  • 梶聡一郎(被疑者。長野県警察本部警務部教務課次席・警部):渡瀬恒彦
  • 佐瀬銛男:高嶋政伸
  • 梶啓子 (梶聡一郎警部の妻。被害者):風吹ジュン
  • 梶俊哉:吉川史樹
  • 志木美紀:志保
  • 池上一志:中林大樹
  • 田沼光子:ふくまつみ
  • 高野貢:隈部洋平
  • 鈴木浩介
  • 小林隆
  • 森岡豊
  • 加賀美康博(長野県警察本部本部長・警視監):矢島健一
  • 片桐時彦:深水三章
  • 鈴木孝夫:斉藤暁
  • 中尾洋平:東幹久
  • 小久保令子:若村麻由美(友情出演)
  • 伊予数男(長野県警察本部警務部長・警視長):渡辺いっけい
  • 志木道子:森口瑤子
  • 島村康子:銀粉蝶
  • 岩村肇(長野県警察本部刑事部長・警視正):橋爪功
  • 岩国鼎(検事正):寺田農
  • 志木忠正:竜雷太(当初の発表は小林桂樹)

スタッフ

  • 製作著作:テレビ朝日
  • 製作協力:共同テレビジョン
  • 企画協力:コブラピクチャーズ
  • プロデューサー:佐藤涼一、川島保男、越智貞夫、高橋萬彦
  • アソシエイトプロデューサー:高丸雅隆
  • 演出:土方政人
  • 脚本:佐伯俊道
  • 音楽:村山竜二
  • ロケ協力:富士の国やまなしフィルムコミッション、小山町フィルムコミッション、いばらきフィルムコミッション、安中市、富士吉田市、東京海洋大学 ほか
  • 撮影協力:バスク、ベイシス、フジアール、国際放映
  • 協力:骨髄移植推進財団

備考

  • 山陰中央テレビジョン放送は、2008年10月18日13:00 - 15:20の放送枠で初放送している。

脚注

外部リンク

  • 半落ち - allcinema
  • 半落ち - KINENOTE
  • 半落ち - MOVIE WALKER PRESS
  • 半落ち - 映画.com
  • 半落ち - IMDb(英語)

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映画チラシサイト: 半落ち

半落ち Edit Tamamiブログ