エゾノヨロイグサ(蝦夷の鎧草、学名: Angelica sachalinensis)は、セリ科シシウド属の多年草。

特徴

茎はふつう紫色を帯び、直立して高さ1-2m、太さは径1-3cmになり、中空で、上部は分枝し、しばしば上部の節に細かい毛状突起がある。長い葉柄があり、葉は大型の三角形で、長さ幅ともに30-50cmになり、2-3回3出羽状複葉で、さらに2-3裂することがある。小葉は質がやや厚く、裏面は白色を帯び、長楕円形から狭卵形で、長さ9-20cm、幅4-9cm、先は鋭尖頭または鋭頭、縁は鋭鋸歯になり、基部は切形または広いくさび形となり、しばしば小葉柄に翼状に流れる。茎の上部の葉は小さく退化し、葉柄の基部は倒卵形に鞘状になってふくらむ。

花期は7-8月。茎先や分枝した枝の先端に、細かい毛状突起のある大型の複散形花序をつけ、径3mmの白色の小型の5弁の花を多数、密につける。花はときに淡紅色を帯びることがある。複散形花序の下に総苞片は無く、小花序の下に小総苞片は無いかまたは少数個ある。花柄は30-60個あり、長さ5-8cmになり、小花柄は細く40-60個あり、長さは5-15mmになる。果実は楕円形で、長さ6-10mmになり、分果の背面に3脈あり、側隆条は扁平で広い翼が張り出す。油管は、分果の表面側の各背溝下に1個ずつ、分果が接しあう合生面に2個ある。

分布と生育環境

日本では、本州(中部地方以北および山陰地方)、北海道に分布し、山地の林縁など、日当たりのよい場所に生育する。世界では、朝鮮半島、中国大陸(東北部)、樺太、ウスリー、シベリア東部に分布する。

名前の由来

和名エゾノヨロイグサは、「蝦夷の鎧草」の意で、「鎧草」とは、同属のヨロイグサ A. dahurica のことで、2-4回3出羽状複葉の小葉の連なるようすを、鎧の「板」や「草摺」に見立てたもの。「蝦夷の」とは、そのヨロイグサに似て、北海道に産することによる。

種小名 sachalinensis は、「サハリン(樺太)の」の意味。

ギャラリー

下位分類

次のような下位分類を認める場合がある。

  • ミチノクヨロイグサ Angelica sachalinensis Maxim. var. glabra (Koidz.) T.Yamaz. - 本州の青森県から石川県までの日本海側の低山地に分布する。油管は、分果の表面側の各背溝下に1-2個ずつ、分果が接しあう合生面の左右に扁平なものが2-3個ずつある。
  • ホソバノヨロイグサ Angelica sachalinensis Maxim. var. kawakamii (Koidz.) T.Yamaz. - 利尻島、礼文島に分布し、葉幅が細く、果実が小さい。
  • ケエゾノヨロイグサ Angelica sachalinensis Maxim. var. sachalinensis f. pubescens (T.Yamaz.) T.Yamaz.
  • サンインヨロイグサ Angelica sachalinensis Maxim. var. sachalinensis f. saninensis T.Yamaz. - 同属のシシウドに似る。本州の近畿地方北部、山陰地方に分布する。葉裏は白くならなく、葉裏に毛がない。油管は、分果の表面側の各背溝下に 1個ずつの太いものがあり、しばしば細い油管もある。

脚注

参考文献

  • 高橋勝雄『山溪名前図鑑 野草の名前 夏』、2003年、山と溪谷社
  • 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • The Journal of Japanese Botany, 植物研究雑誌

エゾノヨロイグサ さまに・観音山の花図鑑

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